ブランディングとは?マーケティングとの違いや戦略の立て方を解説
マーケティング分野に携わる方にとって、「ブランディング」という言葉を聞く機会が多いと思います。
しかし、ブランディングについて意味を理解できている方は少ないのではないでしょうか。
ブランディングは、商品やサービスを単なる名前やロゴではなく、独自性や付加価値を備えたものとして位置づけ、それを市場で差別化するためのプロセスです。
この記事では、ブランディングの本質的な意味を解説し、他の用語との違いや戦略の立て方を紹介していきます。
そもそも、マーケティングとは何が違うの?
どのようなステップで進めていけばいいのかを解説していきますね!
ブランディングは顧客に共通イメージを持ってもらうこと
ブランディングは、企業や製品が顧客の心に共通のイメージを築くプロセスです。
これは、単なるロゴや名前ではなく、製品やサービスの独自性、価値観、魅力を表現するものです。
ブランディングの目的は、製品やサービスの独自性や価値観を組み合わせて顧客に自社や製品に対する信頼感を持ってもらい、そのブランドを選ぶ理由として位置づけることです。
ブランドを消費者に浸透させ、感情的なつながりや信頼を築き、市場内での差別化を確立します。
ブランディングが必要な理由
ブランディングが必要な理由は、競争が激化し、顧客が選択肢を持つ現代の市場環境において、差別化の鍵となるからです。
ブランディングを実施することは、自社のブランドが果たすべき役割や、顧客にどのように認識されたいかを明確にし、ターゲット市場で「〇〇と言えばこの商品」という意識を根付かせることです。
ブランディングが成功すれば、広告宣伝費や販促にかかるコストを削減し、それを商品開発、価値の向上、顧客サービスの向上に投資できる可能性が生まれます。
また、競合他社との価格競争からも脱却できるでしょう。
ただし、ブランディング活動にはコストがかかります。
特に、競合が既に強力なブランドを確立している市場では、そのブランドに対抗するのは簡単ではありません。
ブランディングにコストをかけるか、他の施策にリソースを投入するかは、戦略にかかっています。
自社の商品やサービスが市場で唯一無二のブランドになる可能性がある場合、ブランディングに挑戦する価値は充分にあります。
ブランディングとマーケティングの違い
ブランディングとマーケティングは混同されやすい言葉ですが、それぞれ異なる目的で実施されます。
マーケティングは企業が直接メッセージを伝え、生活者に望む認識を促し、最終的に購入に繋げることを目指します。
一方、ブランディングは商品の価値を高め、その価値を広めることで、生活者に特定のブランドイメージを構築させるために行われます。
ブランディングとプロモーションの違い
プロモーションは一時的な宣伝活動であり、セールスや特別なイベントなどを通じて製品やサービスの販売促進を行います。
対照的に、ブランディングは持続的で独自のアイデンティティを築くためのプロセスであり、長期的な視点を持っています。
ブランディングの取り組みによってターゲット層に肯定的な印象を与え、その後商品の売り込みや購買を促進するプロモーションを展開することで、相乗効果を生み出します。
ブランディングの種類
ブランディングの種類はさまざまあり、企業や組織が異なる側面からアプローチします。
異なるブランディングの種類を組み合わせて活用することで、企業や組織は総合的なブランド戦略を展開し、持続的な成功を収めることができます。
ここからは、主要なブランディングの種類を紹介します。
インナーブランディング
インナーブランディングは、組織内部に焦点を当てたブランディングです。
従業員に対し、企業の価値観や文化を浸透させ、共有させることを目的とします。
従業員がブランド理念に共感し、それを体現することで、外部に向けた一貫性のあるブランドイメージを構築します。
アウターブランディング
企業や商品のブランド戦略を指す用語で、企業ブランディングやコーポレートブランディングとも呼ばれます。
アウターブランディングは企業が外部の顧客や関係者に向けてブランドを構築し、伝えるための戦略です。
ブランドの認知度を向上させ、製品やサービスに対する需要を創出し、顧客からの信頼と忠誠を獲得することを目標としています。
広告、マーケティングキャンペーン、ソーシャルメディア戦略など、さまざまなチャネルを通じて展開されます。
サービスブランディング
プロダクトやサービスに対するブランディングと、企業の組織価値向上を促進するためのブランディングです。
サービスブランディングの主な目的は、商品やサービスのファン層を拡大し、ユーザー数や売り上げを増加させることです。
サービスの品質、提供方法、顧客対応などがブランドイメージに大きな影響を与えます。
採用・育成ブランディング
従業員の育成とキャリアの発展も、ブランディングの一環として重要です。
自社の独自な魅力や差別化要因を伝え、就職や転職において自社を選ぶ動機づけを促進します。
webサイトや外部のプラットフォーム、SNSなどが利用されます。
ブランディングを行うメリット
企業がブランディングを行う理由は、次の3つのメリットがあります。
- ファンの育成につながる
- 競合との差別化ができる
- 費用対効果が上がる
それぞれ詳しく解説していきます。
ファンの育成につながる
ブランディングによって長期的に商品やサービスを利用し続けてくれるファン層を育て、ロイヤリティの向上につながります。
顧客や支持者は、ブランドのメッセージや価値観に共感し、継続的な関係を築く傾向があります。
生活者が商品やサービスを単発で利用するのではなく、継続的にリピート購買を行うようになると、顧客のライフタイムバリュー(LTV)が向上し、長期的な売り上げに貢献します。
競合との差別化ができる
ブランディングを通じて、自社の商品やサービスを「差別化」できる能力が向上します。
独自のブランドアイデンティティを構築し、市場で特別な存在として認識されることで、競争の激しい環境で優位性を確立できます。
商品の機能や性能は初めは競合他社との差別化要素となりますが、中長期的には競合他社と同様の機能を提供することが一般的になり、商品がコモディティとして扱われる傾向があります。
しかし、消費者との信頼と信用を築くことに成功すれば、中長期的な視点で考えても他社との競争が減少します。
類似した商品やサービスが市場に登場しても、ブランディングによって構築されたイメージが選択の決め手となり、他の選択肢よりも優先される状況を作り出せるのです。
費用対効果が上がる
費用の観点からも、ブランディングは企業にとって不可欠な要素です。
マーケティングでは、1:5の法則という概念が広く受け入れられています。
この法則は、「新規顧客を獲得するためにかかるコストは、既存顧客を維持・販売するためにかけるコストの5倍に相当する」という考え方です。
この法則を考慮すると、ブランディングを通じて既存顧客を忠誠な顧客に変え、新たな顧客を引き寄せることで、広告宣伝費を大幅に削減できる可能性が生まれます。
さらに、ロイヤルユーザーは自発的に口コミを通じて広告を行うことがあり、新規顧客の獲得につながります。
近年では特定のブランドに憧れる一定数の人々が、各世代のカリスマ的存在である「インフルエンサー」と呼ばれる個人に触発され、ブランドへの愛着を深めることがあります。
これにより、従来の広告手法を超えた効果が生まれることもあります。
ブランディング戦略のステップ
ブランディングを成功させるためには、以下のステップを着実に進める必要があります。
- ターゲットとペルソナを設定する
- 自社の環境を分析する
- ブランドコンセプトを決める
- ブランドのタッチポイントを設定する
ターゲットとペルソナを設定する
ますますSNSの影響力が増大する中で、ブランドを誰に向けるかを決定することが最初のステップです。
ブランディングの対象となるターゲット市場やペルソナを明確にしましょう。
誰に対してブランドを構築するのか、その顧客層やペルソナを詳細に定義します。
ファンが新たなファンを魅了し良い循環を生むためには、ブランドを届ける対象やペルソナを明確に描くことが鍵となります。
自社の環境を分析する
ブランディングを実施する際には、大切なのが自社の現状を客観的に把握することです。
競合状況、業界動向、SWOT分析などを通じて自社の強みと弱みを理解し、競争力を高めるための戦略を練ります。
ブランドコンセプトを決める
ブランドの核となるコンセプトを明確に定義します。
これはブランドの使命、価値観、ビジョンを表現するものであり、ブランドのアイデンティティを形成します。
具体的に、誰がどのような目的で、どんな機能を求めているかを詳細に検討しましょう。
それに合わせて、ターゲットに最も訴えかける言葉でブランドコンセプトを言語化します。
複数の候補を検討し、伝えたい価値や企業の強み、特徴が最も鮮明に伝わる言葉を選びましょう。
ブランドのタッチポイントを設定する
ブランドアイデンティティが確立したら、次は生活者との接点である「タッチポイント」の検討が重要です。
タッチポイントは、自社の商品やサービスと顧客との接点や交流の場を指します。
自社のブランドが、生活者とどのように関わり、共感を生むかを考えましょう。
たとえば雑誌がタッチポイントとして考えられる場合、その媒体のカテゴリーや読者層の年齢などを考慮し、ブランドアイデンティティに適した媒体を選択します。
施策を実行した後は、各タッチポイントごとに効果の評価や振り返りを行いましょう。
次回の施策に生かすことで、ブランディング戦略を継続的に改善していくことができます。
ブランディングを成功させるためのポイント
ブランディングを成功させるために、意識しておきたいポイントがあります。
一貫性のある発信をする
ブランディングの成功には、一貫性のある発信が重要です。
企業やブランドが異なるメッセージやイメージを繰り返し伝えると、生活者に混乱を招く可能性があります。
たとえば、web広告で「ビジネスパーソンをサポートする」というメッセージを伝える企業が、テレビCMで「子育て中のお母さんを支援する」というメッセージを発信した場合、生活者はメディアによって異なるブランドイメージを持つ可能性があります。
ブランディングのメッセージやビジョンを一貫して伝え、ブランドのアイデンティティを明確にすることが重要です。
この一貫性は、ロゴやスローガン、広告、webサイト、SNSなど、さまざまなコミュニケーションチャネルで統一しましょう。
自社の強みを活かす
ブランディングにおいて、自社の強みを最大限に活かすことは重要です。
競合他社との差別化を図り、独自の価値提供を行うために、自社が持つ独自の特徴や優位性を強調しましょう。
顧客が自社ブランドにどのような価値を求めているかを理解し、その価値を活かしてブランディング戦略を展開することが大切です。
自社独自の強みを客観的に評価し、それをさらに強調する戦略を練り、愛されるブランドを築いていきましょう。
長期間実施する
ブランディングは短期間で成果が出るものではありません。
長期的な取り組みが必要です。
ブランディング戦略を継続し、ブランドイメージを徐々に構築していくことで、信頼性や認知度を高めることができます。
短期的な成功にこだわるのではなく、企業と生活者の協力によってブランドを育て、長期的な成果を収められるよう心がけましょう。
効果検証して改善し続ける
ブランディングの効果を検証し、必要に応じて改善を行うことが不可欠です。
成果は即座に現れるものではないため、たとえば1ヵ月や3ヵ月、半年などのスパンで効果測定を行うことで、生活者の反応やパフォーマンスを評価できます。
効果測定のために、事前にどのような成果を期待するのかについて詳細な仮説を設定することも重要です。
ブランド戦略は継続的な改善が不可欠であり、時代の変化や外部環境の変動に適応する必要があります。
定期的な効果測定に加えて、施策が生活者に適していないと感じる場合や、状況が変わった場合には、戦略全体を見直す検討も必要です。
市場状況や顧客のニーズは変化するため、柔軟に対応し、戦略を調整し続けることが大切です。
企業のブランディング成功事例
最近では、多くの企業がブランディングに力を入れて成功しています。
その中でも、特に注目すべき5つの成功事例を紹介します。
土屋鞄製造所
土屋鞄製造所は、日本の伝統的な鞄製造業界において、その歴史と職人技を活かしてブランディングに成功した企業です。
商品の魅力だけでなく、その背後にあるストーリーやシーンを含む写真を積極的にSNS上で共有しています。
このアプローチが共感を呼び起こし、FacebookやInstagramなどのプラットフォームで多くのファンを獲得しています。
自社の鞄が持つ独自性と品質に焦点を当て、日本国内外で高い評価を受けるブランドとしての地位を確立しました。
ライフネット生命保険株式会社
ライフネット生命保険は、「保険料を半分にすることで、若い人たちが安心して子供を育てられる社会を築く」という創業理念から生まれた企業です。
シンプルで分かりやすい保険商品と、オンラインを活用したコスト効率の良いサービスを提供することで、ブランディングに成功しました。
保険が複雑で高額であるという一般的なイメージに対抗し、テレビCMを通じて「安価」「安全」「わかりやすい」という特徴を積極的に伝え、主要なターゲット層にこのイメージを強く印象づけています。
その結果ライフネット生命保険は、新たな顧客を獲得し競争力のあるブランドとして成長しました。
スターバックスジャパン株式会社
スターバックス コーヒー ジャパン株式会社は、広告宣伝を一切行わず、高品質なコーヒーとくつろぎの空間を提供することでブランディングに成功した企業です。
スターバックスは日本のコーヒー市場に参入した際、他社とは異なるコーヒー体験を提供することを目指しました。
店内の快適な雰囲気やスタッフの高いホスピタリティなど、店舗の環境設計を通じてブランドの価値を提供しています。
熱心なファンを獲得する背景に、企業webサイトとSNSを活用した製品情報の発信があります。
新製品や期間限定商品に関する情報を迅速に提供したり、おすすめのカスタマイズ方法を共有したりと、顧客が実際に店舗を訪れて商品を試したくなる魅力的な情報が提供されています。
カゴメ株式会社
カゴメ株式会社は、採用プロセスにエントリーシートを提出したすべての応募者に、内定の有無にかかわらず、手紙と一緒にトマトジュースなど自社製品を贈る独自のアプローチを取っています。
この手紙には「ご応募いただきありがとうございました」とのメッセージが添えられており、その心遣いはTwitterなどで話題となりました。
この取り組みは企業の「感謝」の理念を具現化した、独自の採用ブランディングと言えるでしょう。
カゴメ株式会社の採用ウェブサイトには、
「多様な個性の方をバランスよく採用したいと思っています。『自分の持ち味』を大切にしてください」
というメッセージが掲載されており、選考応募者を尊重しながらも、多様な人材を求めている姿勢が明確に伝えられています。
株式会社星野リゾート
星野リゾートは、リゾートホテル、温泉旅館、都市観光ホテル、スキー場など、多彩な旅行シーンを提供する企業として、独自のブランディングを成功させています。
美しい自然環境と日本の文化を融合させ、訪れる人々に心地よい体験を提供しています。
この成功の背景には、独自の「ホスピタリティ」の哲学があり、お客様からの「サービスを受ける」のではなく、お客様自身の個性やこだわりをサービスに組み込む考え方に基づいています。
この独自のアプローチにより、高級路線のサービスとは異なる価値を提供しているのです。
まとめ
この記事ではブランディングが企業にもたらすメリットや、ブランディングを実施する際の重要なポイントについて紹介しました。
日本市場が縮小傾向にある中で、ブランディングの重要性がますます高まっています。
自社や自社の商品、顧客や競合を正しく理解し、戦略的にブランディングを活用することが大切です。
NUVOでは、伴走型のマーケティング支援サービスを提供しています。
マーケティングに関して悩みや課題を抱えている方は、ぜひご相談ください。
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